日本史、三国志(中国史)を専門とする歴史コラムニスト/歴史紀行作家/随筆家の上永哲矢(うえなが てつや)です。

「アイヌ 文化と伝承」中國紀行CKRM22(主婦の友ヒットシリーズ)

「アイヌ 文化と伝承」中國紀行CKRM Vol.22

メインライターとして特集記事を執筆しました。

雑誌「中國紀行CKRM」最新VOL.22(主婦の友ヒットシリーズ)は、アイヌ特集です。

二風谷の沙流川歴史館、旭川のカムイコタン、阿寒湖アイヌコタン、白老「ウポポイ」など北海道各地を取材し、「アジアの中のアイヌ文化」に着目した熱い特集です。

まげを結い、和装で歩く人が今の日本で見られなくなったことと同 じように、北海道で民族衣装を着て過ごすアイヌの人を見ることは、 儀式やイベントの場を除いてなくなったと言って良い。
そのいっぽうで、丸木舟に乗って鮭をとったり、小屋のなかで囲炉 裏に薪をくべたりして暮らすアイヌが存在すると思っている人は、 今も少数ながらいるようだ。それは、アイヌがどういう民族で、どの ような歴史をたどってきたのか、今はどう暮らしているのか。そう いった知識や理解がまだ十分に浸透していない事情もあるだろう。  幸いにも昨今、アイヌをテーマにした漫画のヒットや、白老にウ ポポイ(民族共生象徴空間)がオープンするなど、民族というものに 対する世の関心が非常に高まっている。このような流れで情報が広 まれば、そうした無理解も少しずつ解消されていくに違いない。
なぜアイヌに興味を持つのか、その文化を深く知りたいと思うの か。それは彼らの暮らしが、自然や動植物と本気で向き合ってきた からではないか。だが、ずっと都会に暮らしていると、ヒトが動物 の一種に過ぎないことや、ほかの生き物の助けがなければ生きられ ない、そんな当たり前のことも記憶から消えてしまうような危うさ を覚えることがある。  琉球(沖縄)を旅したときもそうであったが、アイヌ本来の考え方や 生活に触れると、人間の原点を思い出せるような感情がこみあげてく る。人間とは何かを問うきっかけができる。アイヌの歴史や今を知る ことは、アジア人とは何か、日本人とは何かを考えることにもつなが るだろう。  今こそ、忘れそうな記憶を呼びさます旅に出ることにしよう。(本誌 P15 特集トビラより)